欧州委がガスプロムの調査打切、是正策受け入れ制裁回避

欧州委員会は24日、ロシアの国営ガス会社ガスプロムが中東欧市場で公正な競争を阻害した疑いで調査を進めている問題で、同社が提示した是正策を拘束力のある公約として受け入れると発表した。7年近くに及んだガスプロムに対する調査は打ち切られ、同社は巨額の制裁金を免れることが確定した。

欧州委は2012年、ガスプロムが中東欧市場における独占的な地位を乱用し、ガス価格を不当につり上げるなどして公正な競争を阻害している可能性があるとして、正式な調査を開始した。同委はブルガリア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアの計8カ国のガス市場で競争法に違反したとの疑いを強め、15年4月に異議告知書を送付。ガスプロムが同社から天然ガスを購入する顧客企業に再輸出を禁止したり、買い入れたガスを特定の地域でのみ使用することを強制するなどの制約を設け、欧州連合(EU)域内でのガス取引を阻害していると指摘していた。

ガスプロムは制裁を回避するため、昨年3月に和解に向けた改善策を提示し、中東欧市場における自由なガス取引の障害となるあらゆる契約条項を排除することを確約した。欧州委も和解に応じる姿勢を見せていたが、厳しい対応を求めるポーランドなどが難色を示し、意見調整が長引いていた。

是正策によると、ガスプロムは◇再輸出を禁止するなどの商慣行を排除する◇ブルガリア、ポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアの5カ国で西欧の市場価格を基にしたベンチマークを導入し、120日以内に料金設定で合意できない場合はEUが介入する◇パイプラインが近隣諸国と接続されていないブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニアの4カ国に対し、国境を越えた事業者間のスワップ取引を促してガス市場の孤立を解消する◇自社が保有・管理するインフラへの投資や、国内パイプライン網への優先的なアクセスをガス供給の条件としない――などが義務付けられる。

ガスプロムは今後8年間にわたって是正策を順守しなければならず、履行義務に違反した場合は世界における年間売上高の最大10%の制裁金を科せられる可能性がある。

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