欧州連合(EU)の欧州委員会は5月28日、医薬品の特許権存続期間を延長する「補足保護証明(SPC)」制度に関するEU規則の改正案を発表した。医薬品の研究・開発を奨励する目的で導入されたSPCの運用ルールを一部修正し、新薬が特許権で保護されていない域外の国・地域に輸出する後発医薬品(ジェネリック)やバイオシミラー(バイオ医薬品の後発薬)を域内の医薬品メーカーが製造できるようにする。今後、欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討する。
医薬品の開発には長い年月と莫大な費用を要するが、臨床試験や審査など長期にわたる販売承認の手続きのため、実際に特許権を行使できる期間が十分に確保できないという問題がある。EUでは1992年にSPC制度が導入され、承認手続きに要した期間に応じて最大5年まで特許権の存続期間を延長できるようになった。
一方、世界の医薬品市場では後発薬の需要が急速に伸びているが、特許権の存続期間は後発薬を開発できないため、域内の後発薬メーカーはSPC制度によって国際競争で不利な立場に置かれており、より良い環境を求めて域外に拠点を移す事態が懸念されている。欧州委はこれを受け、高いレベルで創薬メーカーの知的財産権を保護する一方、SPCに関する規制を緩和して、同制度による特許存続期間の医薬品については輸出用の後発薬を域内で製造できるようにすることを提案した。
欧州委のビェンコフスカ委員(域内市場・産業・起業・中小企業担当)は、改正案が承認されると欧州製薬業界の年間売上高が約10億ユーロ拡大し、10年間で最大2万5,000人の雇用創出につながると意義を強調した。