難民申請ルール巡り加盟国の溝埋まらず、伊首相は抜本的見直し要求

EU加盟国は5日、ルクセンブルクで移民政策を担当する内相らによる会合を開き、難民保護申請に関する現行ルールの見直し案について協議した。しかし、難民申請の処理を加盟国で分担する仕組みの導入を訴えるギリシャやイタリアなどと、難民の受け入れ分担に反対する東欧諸国などの溝は埋まらず、目標としていた今月末のEU首脳会議での合意形成は困難な情勢だ。

チュニジア沖では今月2日、大量の不法移民を乗せた漁船が沈没し、112人が死亡した。国際移住機関(IOM)によると、今年に入って地中海で起きた海難事故では最悪の犠牲者数という。中東・アフリカから地中海経由で欧州に入った難民・移民は2015年をピークに減少しているが、事故は頻発しており周辺国は取り締まりを強化している。

EU域内における難民保護申請のルールを定めた「ダブリン規則」によると、現在は難民希望者が最初に到着した加盟国が保護申請を受け付ける決まりになっており、例えばギリシャに到着した難民らは同国で難民の要件を満たしているか、それとも不法移民に該当するかを判断するための審査を受けなければならない。このため中東やアフリカから大量の難民が流入したギリシャやイタリアでは、ドイツなど北部欧州の国に難民管理の負担を押し付けられているとの反発が根強く、保護申請の処理を加盟国で分担する仕組みを導入すべきだと主張している。

加盟国はダブリン規則の改正に向け◇最初に到着した国に保護申請の処理を義務付けるルールを廃止し、国の規模や経済状況、難民・移民の受け入れ能力などを総合的に判断し、難民希望者を加盟国で分担する◇最初に到着した国が保護申請を受け付ける原則を維持したうえで、難民の流入が急増した場合などは希望者を加盟国で分担する—-などの選択肢について検討を進めてきたが、協議は暗礁に乗り上げている。

イタリアで6日発足したEUに懐疑的な連立政権を率いるコンテ首相は、前日に行った所信表明演説でEUの移民政策に触れ、ダブリン規則の抜本的な見直しを要求。加盟国に公正な分担を義務付ける仕組みの導入を訴えた。

難民危機への対応をめぐっては、15年秋にギリシャとイタリアに流入したシリア難民など計16万人を2年以内に加盟国で分担して受け入れることで合意した。しかし、ハンガリーなどの反発が根強く、これまでに実行されたのは2割弱の3万4,690人にとどまっている。

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