勤務免除の事業所委メンバー選出、雇用主との事前協議は不可欠か

一定規模以上の企業では事業所委員会(Betriebsrat)のメンバーの一部が、通常勤務を全面的に免除される。これは事業所体制法(BetrVG)38条に記されたルールで、事業所委の業務に専念できるようにする狙いがある。

勤務免除の対象となる事業所委員の数は企業の規模によって異なり、従業員数200~500人の企業では1人、501~900人では2人、901~1,500人では3人と雇用数の増加に比例して増えていく。9,001~1万人では12人に達し、それ以上の場合は従業員2,000人ごとに1人を上乗せしていく。

勤務免除の対象者は雇用主との話し合いを行った後に事業所委員のメンバーがメンバーの間から選出する。では、雇用主との話し合いを持たずに選出を行うことは違法であり、無効なのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月の決定(訴訟番号:7 ABR 26/16)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はラインラント・ファルツ州にある企業の事業所委員会が行った勤務免除メンバーの選出を違法として事業所委の一部メンバーが起こしたもの。同社では2014年に事業所委員の選挙が行われ、計34人の委員が選出された。選挙後の3月24日に行われた事業所委の初会合では勤務免除の対象者、計10人が選出された。

勤務免除メンバー選出に際しては候補者名簿が3つ提出された。そのうちの1つである「イニシアチブ・リスト」にはSとBの2人の名が掲載されていたが、同名簿の得票数が6票にとどまったことから、Sだけが勤務を免除されることになった。

Sは通常勤務を行いたい、勤務免除の地位を6月1日付で返上した。イニシアチブ・リストのもう一人の候補者であったBはすでに事業所委を退いていたことから、事業所委員会は10月16日、3月の勤務免除メンバー選出の際に「IB」という候補者名簿に掲載されていた人物をSの代替要員として選出した。

この代替要員選出の際に雇用主との話し合いを事前に持たなかったことから、事業所委員会の一部メンバーは違法だと批判。同選出の無効確認を求めて提訴した。無効確認が認められない場合に備えて、同選出の取り消しも申請した。

最高裁のBAGはこの訴えを退けた。決定理由で裁判官は、雇用主は勤務免除メンバーの選出結果に異議を持つ場合、雇用主と事業所委が任命するメンバーで構成される調停所(Einigungsstelle)の開設を2週間以内に決定でき、この権利を行使しない場合は選出結果を承認したとみなされるとしたBetrVG38条2項第4文~第7文の規定を指摘。この規定を踏まえると、勤務免除メンバーの選出前に雇用主と話し合うとした同2項第1文の規定は本質的に重要なものではないとの判断を示した。

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