欧州委がカタール国営石油会社に対する調査開始

欧州委員会は21日、カタールの国営石油会社カタール・ペトロリアムが液化天然ガス(LNG)の欧州向け輸出でEU競争法に違反した疑いがあるとして本格調査を開始したと発表した。LNG市場における市場支配的な地位を利用して、欧州の輸入業者と結んだ取引契約に第3者への転売などを禁止する「地域制限条項」を盛り込み、域内における自由なガス流通を阻害した可能性があると説明している。

カタールは世界最大のLNG輸出国で、EUは輸入の約40%を同国に依存している。LNGの取引では決められた港以外への輸送や第3者への転売を禁止する地域制限条項が契約に盛り込まれるケースが多く、売り手側は輸出量や価格などをコントロールしやすくなる一方、買い手側は需要が減って供給過剰になった場合でも転売できず、市場の流動性を阻害しているとの批判が高まっている。欧州委はロシアの国営ガス会社ガスプロムが中東欧市場で公正な競争を阻害した疑いで2012年から調査を進めていたが、同社が提示した地域制限条項の撤廃を含む是正策を受け入れ、今年5月に調査を打ち切った経緯がある。

カタール・ペトロリアムが欧州の輸入業者と結んでいる契約は通常20~25年と期間が長く、欧州委はこの点も問題視している。同委のベスタエアー委員(競争政策担当)は「カタール・ペトロリアムのガス供給契約に問題となる地域制限条項が含まれていないかどうか精査する。こうした契約条項は公正な競争を阻害し、消費者が統合された欧州エネルギー市場のメリットを享受するのを妨げる」とコメントした。カタール・ペトロリアムは欧州委の調査に全面的に協力する方針を示している。

上部へスクロール