自動車大手の独ダイムラーは20日、2018年12月期の営業利益(EBIT)予測を下方修正した。米国の保護主義政策に端を発する通商摩擦などを踏まえたもので、17年12月期実績を「やや上回る」としてきた従来予測を「やや下回る」へと引き下げた。DAX(ドイツ株価指数)採用の大手企業で通商摩擦を理由に業績見通しを引き下げたのは同社が初めて。市場関係者は他の企業も追随すると予想している。
中国政府は16日、同国製品に対する米国の輸入関税上乗せへの報復として500億ドル規模の米国製品に追加関税をかけると発表した。自動車も対象に含まれていることから、米国製車両の対中輸出に影響が出る見通しだ。
ダイムラーはこれを踏まえ、米国で生産するSUVの対中輸出が減るほか、通商摩擦に伴う増加コストを顧客に全面転嫁はできないとの見方を提示。また、中国販売の減少分を他の国への輸出で完全に穴埋めすることもできないとして、乗用車部門メルセデスベンツ・カーズの今年のEBITが昨年実績をやや割り込むとの見通しを示した。
欧州連合(EU)排ガス規制強化を受けて9月以降に新車登録する車両は、実際の走行に近い排ガスデータが得られる台上試験「世界統一試験サイクル(WLTP)」をクリアしなければならないという事情も利益を圧迫する。従来の試験に比べハードルが高いため、多くのメーカーが対応に苦慮している。
同社はこのほか、排ガス不正の指摘を受けたバンのリコールとラテンアメリカ市場のバス需要減少も利益を押し下げるとしている。
競合BMWも米国で生産したSUVを中国に輸出していることから、通商摩擦のしわ寄せを受けるとみられている。BMWの広報担当者はロイター通信に、この問題に対応するために「様々なシナリオと戦略オプションの可能性を検討する」ことを明らかにした。業績予測は据え置くとしている。