スイスの製薬大手ノバルティスは6月29日、眼科関連事業の子会社アルコンをグループから分離し、2019年前半にスイスおよびニューヨーク証券取引所に上場させると発表した。ノバルティスは中核の医療用医薬品事業に経営資源を集中させる取り組みを進めており、今回の決定もそうした戦略の一環。アルコンの時価総額は250億ドル規模に達するとみられている。
アルコンは眼科手術用製品やコンタクトレンズの世界的大手。ノバルティスは11年にスイスのネスレから約50億ドルでアルコンを買収したが、業績不振のため昨年1月に同部門の分離を検討すると表明していた。なお、アルコンの眼科用医薬品事業は2年前にノバルティス本体に移管されている。アルコンの17年通期決算は売上高が約50億ドル、営業損益は1億9,000万ドルの赤字だった。
ノバルティスのイェルク・ラインハルト会長は声明で「アルコンの将来について、売却や新規株式公開(IPO)を含むあらゆる選択肢について検討した結果、完全な分離が株主の利益とノバルティスの戦略にとって最適と判断した」と説明。バサント・ナラシンハン最高経営責任者(CEO)は「ノバルティスの中核事業は世界トップクラスの革新的な医療用医薬品事業であり、そこに経営資源を集中させる必要がある」と強調した。
一方、ノバルティスは同日、50億ドルの自社株買いを実施する方針を発表した。同社は一般用医薬品の合弁事業の全持ち分を合弁相手の英グラクソ・スミスクライン(GSK)に130億ドルで譲渡することで合意しており、この売却益を自社株買いの資金に充てるという。