加盟国、鉄鋼セーフガードの暫定的導入を承認

欧州連合(EU)加盟国は5日、米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、欧州委員会が提案した鉄鋼製品に対する緊急輸入制限(セーフガード)の暫定的導入を承認した。同措置は米市場から締め出された鉄鋼製品が大量にEU市場に流入し、域内の企業に損害を与える事態を防ぐ狙いがある。正式な承認手続きを経てEU官報に掲載後、7月中旬にもセーフガード措置が暫定的に発動される見通しだ。

EUは米国への対抗措置として、6月22日付で28億ユーロ規模の報復関税を発動すると共に、世界貿易機関(WTO)での紛争処理手続きを進めている。欧州委はこれに先立ち、3月末から鉄鋼製品に対するセーフガード調査を進めており、マルムストローム委員(通商担当)は先月末、同措置の暫定的な導入を検討していることを明らかにした。

欧州委は電子メールによる声明で「最新の貿易統計は米国が25%の追加関税を課した結果、EU市場に鉄鋼製品が大量に流入したことを示している」と指摘。対抗措置として、7月中旬にも輸入数量割当制(クオータ制)を導入する方針を表明した。セーフガード調査の対象となっている鋼板、条鋼、鋼管など28品目の全てまたは一部について、過去数年間の輸入実績を基に割当枠を設け、超過分に対して25%の関税を課すという内容だ。

一方、欧州委は2日、米商務省に送った6月29日付の書簡を公表し、トランプ政権が自動車の輸入制限に踏み切った場合、EUなどによる報復関税で米側に最大で2,940億ドル(2017年の輸出総額の19%に相当)の損害が出る可能性があると警告した。

トランプ大統領はEUが米国への対抗措置として報復関税を発動したことを受け、欧州車に20%の関税をかけて「再報復」する構えをみせている。米側は「安全保障上の脅威」を理由に輸入制限に向けた調査を進めているが、欧州委は書簡で「(米側の主張は)事実に基づいておらず正当化できない」と批判。欧州メーカーが米国で年間に約290万台の自動車を生産し、全米で12万人(ディーラーや自動車部品の販売店を含めると約42万人)の雇用を支えていると強調し、トランプ政権が輸入制限を発動すれば、米国の国内総生産(GDP)を130億~140億ドル押し下げる可能性があるとの見方を示した。

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