ブルガリアの自動車産業が急速に成長している。ITや観光などの産業部門を上回るペースで伸びており、現在では国内総生産(GDP)の5%を占め5万人近くを雇用する規模に達している。しかし進出企業に対する優遇措置や人材の不足といった課題もあり、産業界は政府の支援措置拡大を求めている。それを背景に政府は企業への助成措置の拡大や職業教育及び高等教育に関連した法律の改正に乗り出している。
自動車メーカーなどが参加する業界団体、「ブルガリア自動車クラスター」によると、同国の自動車産業は6年前の時点ではGDPに占めるシェアは1%未満で9,000人を雇用するに過ぎなかった。しかし現在ではGDPの約5%、雇用者数は4万7,000人に達し、250億レフ(約127億8,200万ユーロ)を超える産業規模に成長した。企業数は170を上回る。他方、同国では乗用車の生産が行われていないなど近隣のルーマニアなどと比べると立ち遅れも目立っている。中国の長城汽車は2012年に組立工場を開設したものの、16年1月に操業停止に追い込まれた。
こうした状況を背景に自動車業界は政府に対し、人材育成と同国への投資を進めるための大幅な助成措置の導入を求めている。ブルガリア自動車クラスターのスタニスラフ専務理事は、先ごろ開催された同国の自動車産業に関するフォーラムで、大手の自動車メーカーや部品メーカーの進出を促すためには、時に従来の規模を上回るような大規模な助成措置が必要だとの考えを示した。
これに対し、フォーラムに出席した政府のシメオノフ副首相は、自動車関連企業に対し全面的な支援を行うと約束した。またボリソフ副経済相は、労働者の不足に対しては投資法に基づき従業員の訓練に対する助成を行うことができるほか、これまでの進出企業には従業員の社会保障費に対する助成措置が実施されていると述べた。同副相によると、政府は同国中部のスタラ・ザゴラに工業地域を創設するため助成措置を実施するほか、首都ソフィア及びブルガス周辺に工業地域を形成するプロジェクトも推進。自動車メーカーなど高度産業の投資家を呼び込むことを目的として2016年初頭以来、事業総額3億レフに上る11のプロジェクトを実施してきている。これらを通して8,200人の雇用が創出される見通しだ。
一方、同フォーラムでミハイロバ副教育相は職業教育に関し政府が進めている法改正などについて話した。現在9年生から12年生の1万263人の若者が陸上での輸送に関連する分野で教育を受けており、仮に全員が同分野で就業すれば、労働者不足の問題は解決するとの考えを示した。同副相は、学校での教育と職場での訓練を並行して行う「デュアル」システムに関する職業教育法の改正案を検討していることも明らかにした。
同国議会のダミアノバ文教委員会議長によれば、教育課程を産業界が支援するための高等教育法の改正案が現在検討されており、9月末までに採決される予定だ。また職業教育法の改正案が今週にも議会に提出され、法案の第1読会が今月末に開催される見通しとなっている。(1BGN=67.05JPY)