欧州委が難民審査施設への支援策提案、加盟国に自主的設置促す

欧州委員会は24日、難民申請を取り扱うEU共通の「管理センター」を自主的に設置する加盟国に対する支援策を提案した。施設の運営にかかる費用をEU予算で賄うと同時に、審査に必要な人材を派遣することが柱。さらに難民・移民を受け入れた加盟国に対し、1人当たり6,000ユーロを支払うことも盛り込んだ。

EUは6月末の首脳会議で、域外と域内の双方にEU共通の難民審査施設を設置し、負担を分担することで合意した。欧州を目指して地中海を渡る難民・移民が最初に上陸するイタリアやギリシャの負担を軽減するための措置で、密航中の事故による犠牲者を減らす狙いもある。欧州委は首脳会議の合意内容に基づいて具体策を検討していた。

域内に設置する管理センターでは国際的な保護が必要な難民かどうかを審査し、要件を満たしていない経済移民は本国に送還する。EUは資金面だけでなく、申請手続きを行う担当官や通訳の派遣など、運営面でも全面的に支援を行う。欧州委は早急に管理センターの試験運用を開始したい考えだが、これまでのところ設置を表明した加盟国はない。

EUの支援策が管理センターの自主的な設置を後押しするかは未知数だ。イタリアのサルビーニ副首相兼内相は「わが国はEUに慈善事業を求めているわけではない。イタリア政府は難民申請者1人当たり4万~5万ユーロの税金を投入している。EUに求めているのは金銭ではなく尊厳だ」と述べ、欧州委の提案する支援策で難民・移民の流入を阻止することはできないと非難した。

一方、域外に設置する入域管理施設に関しては、今月30日にジュネーブで国際移住機関(IOM)や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協議し、具体策を検討する。EUは密航ルートの経由地である北アフリカを念頭に置いているが、設置場所をめぐる調整は難航が予想される。

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