自動車以外の工業製品で関税撤廃へ、EUと米が交渉開始で合意

欧州委員会のユンケル委員長は7月25日、ホワイトハウスでトランプ米大統領と会談し、自動車を除く工業製品の関税撤廃や、米国産の液化天然ガス(LNG)や大豆の輸入拡大に向けて交渉を開始することで合意した。トランプ大統領は、交渉中は自動車の追加関税措置を発動しない方針を示唆しており、ひとまず米・EU間の貿易戦争は回避された。

両首脳は自動車を除く工業製品の「関税、非関税障壁、政府補助金の撤廃」に向け、直ちに高官級の作業グループを立ち上げることで合意。大豆以外の農産品については「調整に時間がかかる」として交渉の対象から除外するが、EUが米国産LNGの輸入を増やすことで合意した。さらに「同じ考えを持つ他の国々と連携して」不公正な貿易慣行や世界貿易機関(WTO)の改革などに取り組むことも盛り込んだ。

首脳会談の最大の焦点は、米国が検討している自動車の輸入制限だった。トランプ大統領は米国による鉄鋼・アルミニウムの輸入制限への対抗措置として、EUが報復関税措置を発動したことを受け、欧州車に20%の関税をかけて「再報復」する構えをみせている。自動車関税をめぐっては米国内でも反対意見が根強く、欧州委はトランプ政権が自動車の輸入制限に踏み切った場合、EUなどによる報復関税で米側に最大で2,940億ドルの損害が出る可能性があると警告している。

ユンケル委員長は会談後の会見で、交渉が進展している間は自動車への追加関税の発動はないとの見解を示した。トランプ大統領も「一方が交渉を打ち切らない限り、今回の合意に反する行動は取らない」と述べたが、自動車関税について直接の言及は避けた。このため交渉が難航した場合、再び米欧間の対立が先鋭化する懸念は残る。

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