ドイツ政府は5日の閣議で、借家人の権利強化に向けた法案を了承した。2015年に施行された現行法が十分な効果を上げていないことから、政府は不当な家賃の値上げなどから効果的に借家人を守るために新法案を作成した。連邦議会(下院)の承認を経て遅くとも来年1月1日までに施行する考えだ。
ドイツの大都市では家賃が急速に上昇し、低・中所得層が借家を見つけるのが難しくなっている。政府はこの事態に対応するため現行法を成立させ、2015年6月に施行した。
同法のポイントは家賃が急上昇している地区を各州政府が「家賃上昇抑制(ミートプライスブレムゼ)」地区に指定できるというもの。同指定を受けた地区では賃貸契約時に地区の相場を10%超、上回る家賃が原則的に禁止される。
ただ、同ルールには例外規定があり、新築住宅と「抜本的な改修」を行った住宅、および以前の借家人の家賃が相場を10%超、上回っていた住宅には適用されない。また、借家人は以前の借家人が支払っていた家賃の額を知らせるよう貸し手に要求できるものの、住宅需要が不足している地域ではこの権利を行使しにくい。
政府はこうした事情を踏まえ今後は、大家が相場の10%超の家賃を新しい借家人に要求する場合は以前の借家人の家賃が相場を10%超、上回っていたことなど正当な根拠があることを、契約締結前に文書で証明することを義務づけ、透明性を高める考えだ。
住宅の改修費用を家賃に転嫁することに関しても借家人の保護強化の方向で法改正を行い、改修費の最大11%を年間家賃に上乗せできるとする現行ルールを同8%へと引き下げる(差し当たり5年間)。また、改修後6年間は1平方メートル当たりの家賃を、3ユーロを超えて引き上げることを禁止する。
さらに、借家人との契約関係を解除するという不当な目的で改修を通告した大家には、最大1万ユーロの過料が科されることになる。改修予告から1年が警戒しても改修工事を始めない場合や、回収後の家賃が2倍以上になると通告した場合が改修の違法な濫用に当たるとしている。