化学大手の独BASFは27日、ロシア系投資会社レターワンと石油・天然ガス事業を合弁化することで最終合意したと発表した。ポートフォリオの最適化やシナジー効果を通して安定的に利益を確保できる体制を構築する狙い。当局の審査を経て合弁化手続きを来年上半期に完了する計画だ。
BASFは子会社ヴィンタースハルを通して石油・天然ガス事業を展開している。欧州、北アフリカ、ロシア、南アフリカ、中東で採掘を実施。欧州でのガス輸送事業も露ガス大手ガスプロムと共同展開している。
レターワンはロシアの資産家ミハイル・フリードマン氏が運営する投資会社。独エネルギー大手RWEの石油・天然ガス採掘子会社DEAを2015年に51億ユーロで買収し、同分野へと参入した。DEAはドイツ、ノルウェー、デンマーク、エジプト、アルジェリア、メキシコで採掘事業を展開している。
BASFとレターワンはヴィンタースハルとDEAを統合し、新会社ヴィンタースハルDEAを設立する。出資比率は当初BASFが67%、レターワンが33%。同出資比率にはヴィンタースハルのガス輸送事業が反映されていないことから、新会社は発足の時点で同事業相当額の転換社債をBASF向けに発行する。同転換社債はそれから3年以内に新会社の株式へと転換されることから、BASFの出資比率は最終的に72.7%へと拡大する。
ヴィンタースハルDEAは売上高が47億ユーロ、EBITDAが28億ユーロ、純利益が7億4,000万ユーロ、年産量が2億1,000万石油換算バレル(すべて2017年実績に基づく計算)で、欧州有数の独立系石油・ガス採掘会社となる。本社はカッセル(ヴィンタースハルの本社所在地)とハンブルク(DEAの本社所在地)に設置する。ヴィンタースハルのマリオ・メーレン社長は新会社の社長兼最高経営責任者(CEO)、DEAのマリア・モラエウス・ハンセンCEOは副社長兼最高執行責任者(COO)に就任する。
出資2社は中期的にヴィンタースハルDEAの新規株式公開(IPO)を実施する考え。
BASFは化学メーカーでありながら、1960年代末から石油・天然ガス事業を展開してきた。投資家からは同事業の分離を求める声が以前から出ていたものの、同社は化学事業が低迷した際に相殺機能があるとして否定的な立場を取ってきた。IPOを行うと、同事業から撤退しやすくなることから、レターワンとの取引はその準備とみられる。BASFは今回、石油・天然ガス事業を1月1日にさかのぼって同社の売上高と利益から除外するとともに、非継続事業扱いとすることを明らかにした。