ヘッセン州政府は19日、フランクフルトに旧型ディーゼル車などの走行禁止ゾーンを設定するよう命じたヴィースバーデン行政裁判所の判決を不服として控訴する意向を表明した。多くのドライバーが走行区域を大幅に制限されることは受け入れられないとしている。旧型ディーゼル車に排ガス浄化装置を後付けすれば走行禁止と同等の空気浄化効果を得られると判断しており、同装置後付けの法的な枠組みを早急に整備するよう連邦政府に要求した。
ヴィースバーデン行政裁判所は5日、ヘッセン州政府が作成したフランクフルト市の大気浄化計画は効果が不十分だとする環境保護団体DUHの訴えを認める判決を下し、旧型のディーゼル車とガソリン車の走行禁止ゾーンを設定するよう同州政府に命じた。具体的には、欧州排ガス基準「ユーロ4」以下のディーゼル車と同ユーロ2以下のガソリン車については来年2月1日以降、ユーロ5対応ディーゼル車についても同9月以降、制限ゾーン内の走行を禁止するよう言い渡した。
州政府によると、同判決が履行されると、フランクフルト市で登録されている自動車の約4分の1が走行禁止の対象となる。また、郊外地域からの通勤者や訪問者の多くは市内の広範な地域に車で乗り入れることができなくなる。
ヘッセン州政府は市民や通勤者が極端なしわ寄せを被ることを問題視。走行禁止措置を実施する場合は「相当性の原則」を守らなければならないとした2月の最高裁(連邦行政裁判所)判決に抵触するとの立場を表明した。
相当性の原則とは、目的を達成するためにはそれに見合った妥当な手段を用いなければならないという原則。過度な手段はこれに抵触するため、違法となる。
排ガス浄化装置の後付けという走行禁止に代わる空気浄化の手段がある以上、走行禁止を実施することは相当性の原理に反するというのが州政府の立場だ。
ただ、浄化装置を後付けした車両は法律上、走行できなくなる。また、法改正が行われ後付けが認められるようになったとしても、後付けの費用を誰が負担するかが大きな問題となる。
旧型車両が現在問題となっている窒素酸化物(NOx)を大量に排出することのおおもとの原因は、違法ないし規制の弱みを突いたソフトウエアを自動車メーカーが投入したことにある。このため排ガス浄化装置の後付け費用を被害者とも言うべき自動車の購入者に負担させることは政治的に難しい。
ヘッセン州政府はこうした事情を踏まえ、自動車メーカーが資金を拠出して基金を作り、後付け費用をそこから出すという案を提案した。
連邦政府はこれまで、浄化装置の後付けに否定的な立場を取ってきたが、ヴィースバーデン行政裁判決後の圧力を受けて態度を軟化。メルケル連邦首相の指示を受けて走行禁止の回避策を検討しているショイアー連邦交通相は14日、対策の1つとして後付けの可能性を排除しない立場を明らかにした。