ティッセンクルップ―会社2分割へ、株主の批判受け―

独複合企業ティッセンクルップ(エッセン)は9月30日の監査役会で、同社を工業会社と素材会社へと分割する計画を承認した。幅広い分野の事業を抱える現在の企業体制に対する株主の批判を受けた措置。今後は分割計画の詳細をまとめ上げ、株主総会で承認を得る計画だ。これらの手続きに1年~1年半を要するとみている。

同社を工業会社ティッセンクルップ・インダストリアルズと素材会社ティッセンクルップ・マテリアルズへと分割する。新会社2社をともに上場株式会社とする考えで、株主は両社の株式を取得する。マテリアルズ社の株式はすべて株主に割り当てる。インダストリアルズ社については50%を大幅に上回る株式を株主に割り当てるものの、それ以外の株はマテリアルズ社の資産とし、マテリアルズ社が安定した財務基盤を確保できるようにする。

インダストリアルズ社はエレベーター、自動車関連、プラント建設の3事業で構成される。マテリアルズ社には印タタ製鉄との鉄鋼合弁(予定)の株式50%と、鉄鋼販売、大型ベアリング、鍛造品、軍用船事業が持ち込まれる。

両社の売上高(2017年実績に基づく数値)はインダストリアルズ社で約160億ユーロ、マテリアルズ社で約180億ユーロ。従業員数はそれぞれ約9万人、4万人。インダストリアルズ社は事業の安定と成長が見込まれるのに対し、マテリアルズ社は景気変動の影響を受けやすい。

ティッセンは6月、タタ製鉄との間で両社の欧州鉄鋼事業を合弁化することで最終合意した。これにより経営の重荷となっていた鉄鋼事業から完全撤退するとともに、収益力の高い事業に経営資源を絞り込む準備を整えた。

だが、ティッセンクルップ株18%を持つスウェーデンの投資会社セビアンと、米ヘッジファンドのエリオットは改革が不十分だと批判。収益力を高めるために鉄鋼以外の事業も分離して同社を解体するよう要求した。これを受けて社長と監査役会長が相次いで辞任する異例の事態へと発展していた。

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