欧州委員会は9月24日、最高裁判事の定年を引き下げるポーランドの新法が司法の独立を定めたEU法に違反しているとして、同国をEU司法裁判所に提訴すると発表した。欧州委はポーランド政府に是正を求める勧告書を送っていたが、十分な対応がみられなかったため提訴に踏み切る。また、司法裁が判断を下すまでの暫定措置として、新法の適用を差し止める仮処分も求める。
ポーランドでは2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い「法と正義」が政権を掌握し、違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、最高裁判事の人事権を政府が掌握するための法改正を行うなど、司法介入を強める制度改革を進めている。これに対し、欧州委はポーランドの司法制度改革がEUの基本理念である「法の支配」に反するとして、昨年末にEUでの議決権停止を含めた制裁手続きに着手するなど、同国への圧力を強めている。
欧州委が問題視している新法は、最高裁判事の定年を70歳から65歳に引き下げることが柱。大統領に3年間の定年延長を申し出ることは可能だが、許可がなければ72人の現職判事のうち、最高裁トップを含む27人が退職を余儀なくされる。ポーランド側は新法について、司法手続きの効率化を図ることが目的と主張しているが、欧州委は司法の独立を脅かすとの立場で、政府の意向に沿った人事構成を実現するのが狙いとの見方を強めている。