特別経済地区(SEZ)はロシアにとって、企業から投資を引き出すための重要なツールとなっている。今年7月に新設禁止が解除されたほか、2012年以前に設置されたSEZの存続年限が20年から49年に延長された。新たな進出企業と並んで既進出企業の利益を図り、長期的な投資を確保する狙いとみられる。
ロシアには現在SEZが25カ所あり、進出企業は約700社、被用者数は2万9,000人に上る。進出企業の投資残高は約3,000億ルーブル(約39億ユーロ)で、これまでの納税額は650億ルーブルとなっている。タイプは工業生産型(9カ所)、技術導入型(6カ所)、観光レクリエーション型(9カ所)、港湾型(1カ所)の4種がある。
誘致の主なターゲットは、製品の一部を輸出する中小企業で、投資と引き換えに固定資産税や法人税、関税の減免、インフラ整備、行政支援といった優遇措置が受けられる。
全SEZの中でも成功が目立つのは、タタルスタン共和国にあるアラブガSEZで、2005年の設置以来56社を招致している。政府助成総額(257億ルーブル)の元はすでにとれ、進出企業の利益は今年、合計13億ユーロに上ると予想されている。被用者数は現在6,500人だが、2020年までに新たに7,000人の雇用が生まれるという。
一番古いリペツクSEZは、2005年の設置で、「最も効率の良いSEZ」として知られる。政府の助成1ルーブルに対し、5ルーブルの民間投資がある。同SEZに進出する103企業は工業製品を手がけ、今年の新規投資額が合計1億5,000万ユーロに達する見通しだ。
モスクワ州にはドゥブナ、イストク、ストゥピノ・クヴァドラートの3つのSEZがあるほか、ドモデドヴォ空港に近いマクシミハ郊外に約5億ユーロをかけてSEZを新設する計画がある。主に物流・食品加工企業の進出が見込まれている。
カリーニングラード州は今年初めから投資優遇措置を強化した。医療機器・医薬品業界への投資について、優遇措置が適応される最低投資額をそれぞれ1,000万ルーブル、100万ルーブルに引き下げた。また、社会保険料も通常の30%から7.6%に低減した。さらに、建設機械や農業機械など12のカテゴリーに分類される設備について、廃棄処理税を免除している。
これらの措置が奏功して年初以来、SEZに入居した企業は30社、投資総額は1億1,000万ユーロに上っている。
このような成功例はあるものの、SEZの全てがうまくいっているわけではない。ロシア会計監査院による4月の調査によると、全SEZのうち投資企業の納税額が国の助成を上回っているのはアラブガ、リペツク、サマラ、サンクト・ペテルブルクの4つだけだ。(1RUB=1.71JPY)