アルバニアとコソボは11月26日、コソボ西部ペーヤで開かれた両国政府合同会議で、自由貿易協定(FTA)に調印した。来年上期中にすべての貿易障壁を取り除く。また、運転免許証など公文書の共通化や、国境を越えた携帯電話サービスのローミング料金を廃止する。コソボとセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナとの対立が収まらない中で、アルバニア系が人口の多数を占める両国が関係を強める形となり、南東欧地域の緊張が一層強まりそうだ。
アルバニアのラマ首相は、コソボ政府が21日、同国の独立を認めていないセルビアとボスニアからの輸入にかける関税を10%から100%に引き上げたことを強く支持。「セルビアの覇権主義的な、行き過ぎた行動をけん制する政治的な判断だ」と全面的な理解を示した。また、2025年までの「(アルバニア)民族統一」実現に向けた協力をコソボに呼び掛けた。
コソボは今月6日、セルビアとボスニアに対する10%の輸入関税を導入した。セルビアについては「敵対的な行為」を、ボスニアについては「コソボ産製品の輸入妨害」を理由に挙げた。続いてコソボの国際刑事警察機構(ICPO)への加盟が20日に否決された翌日、「加盟を妨害した」として税率を100%に引き上げた。
コソボ統計局によると、同国の2017年のセルビアからの輸入は4億5,000万ユーロで、国別で最大だった。ボルニアからの輸入は8,200万ユーロだった。
コソボの人口の9割はアルバニア人で、アルバニアとコソボを核とする民族国家の建国構想(いわゆる「民族的アルバニア」)は以前から存在してきた。ただ、ユーゴ内戦後の微妙な均衡を崩さないよう、「アルバニア民族の統一」が公言されることはなかった。
しかし、ラマ首相は今年2月のコソボ建国10周年式典で「一つの民族の象徴として、一人の大統領を両国の代表とする制度の導入」を提案するなど、民族主義を表に出すようになっており、国際社会の懸念を呼んでいる。