独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手のアルストムは12日、鉄道事業の統合計画をめぐり、欧州連合(EU)の欧州委員会に譲歩案を提出したことを明らかにした。欧州委が指摘する競争上の懸念を解消するため、信号システムと鉄道車両事業について改善策を提示したと説明している。欧州委は譲歩案の内容を精査し、2019年2月18日までに統合認可の可否を判断する。
シーメンスは昨年9月、鉄道事業を柱とするモビリティソリューション部門をアルストムと統合し、新会社シーメンス・アルストムをパリまたはその近郊に設立すると発表した。鉄道車両市場では中国国営2社の合併で誕生した中国中車(CRRC)が圧倒的なシェアを持つため、グローバル市場で対抗するためには欧州大手2社の統合が不可欠と説明していた。
これに対して欧州委は7月、鉄道車両世界2位と同3位の統合が実現すると、欧州では統合新会社のシェアが2位以下の3倍に達するほか、信号システムの分野でも市場独占に近い状況が生まれると指摘し、本格調査に着手。10月末には両社の統合によって域内の鉄道市場で公正な競争が阻害され、価格やサービス面で消費者に悪影響を与える可能性があるとして、シーメンスとアルストムに異議告知書を送付し、12月半ばまでに改善策を示すよう求めていた。
譲歩案の詳細は不明だが、シーメンスとアルストムは「統合新会社の売上高の4%に相当する事業」が対象と説明しており、信号システムと鉄道車両事業の資産売却または競合他社への技術供与が柱とみられる。事情に詳しい関係者によると、欧州委は統合計画を認める条件として、高速鉄道に関連した技術を手放す必要があると指摘していた。