閣僚理が域外企業による買収の審査強化策を承認、20年秋に適用開始

EUは5日開いた通商担当相による理事会で、中国など域外の企業による欧州企業の買収をEUレベルで審査する制度の導入を正式に承認した。これまで国ごとにばらつきがあった審査基準を域内で統一し、インフラやハイテクなど戦略的に重要な産業分野を対象に、安全保障や治安などの観点から欧州委員会と加盟国が連携して監視を強める。欧州議会は2月に承認済みで、2020年秋にも新ルールの適用を開始する。

EU内では数年前から中国企業による買収が相次ぎ、技術流出やそれに伴う安全保障への影響を懸念する声が高まっていた。欧州委は2017年9月、EUレベルの対応を求めるドイツやフランスなどの働きかけを受け、外国からの投資を制限する一方、国家主導の対外直接投資によって戦略目標を達成しようとする新興国の動きを問題視し、戦略的に重要な産業分野に対する投資や買収への監視強化を目的とする規則案を提示した。

新制度で審査対象となる産業分野はエネルギー、インフラ、運輸、通信、データ、航空・宇宙、防衛、金融、半導体や人工知能をはじめとする先端技術など。審査方法としては、まず買収ターゲットとなった企業が拠点を置く加盟国が予備的な審査を行い、欧州委と他の加盟国に結果を報告。EU全体で情報を共有し、買収がEUの安全保障や公的秩序を脅かす怖れがある場合や、複数のパートナーによる研究開発プロジェクトを支援する枠組み「ホライズン2020」や欧州衛星測位システム「ガリレオ」など、EU全体の利益に影響が及ぶ案件に関しては、欧州委が買収認可の可否について「意見」を伝える。ただし、最終判断は加盟国に委ねられる。

EUでは現在、ドイツ、フランス、イタリアなど14カ国が域外からの直接投資を審査する独自の制度を導入しているが、審査の範囲や基準にはばらつきがある。欧州委のマルムストローム委員(通商担当)は声明で「閣僚理の決定を歓迎する。新たな枠組みの導入によって域外からの投資をより厳格に監視し、EUの利益を保護しやすくなる」と強調した。

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