ゴミ分別に及び腰~ロシア

モスクワ市のごみ問題は深刻だ。ロシアでは一般廃棄物の95%は埋め立て処理、1%弱が焼却処理となり、リサイクルに回るのは残る5%弱に過ぎない。モスクワ市で出る膨大なごみの多くは近隣自治体の埋め立て場に運ばれているが、悪臭に加え健康被害の報告も出るなど、風当たりは強くなっている。プーチン大統領は5年以内にモスクワ近郊4カ所、全国で200カ所以上に焼却場を新設する対策を打ち出したが、環境専門家らは効果に疑問を呈している。

そんな中、地道にリサイクルを進める運動が起こっている。モスクワ及び近郊で週1回、住民に分別してごみを出す機会を提供している団体がある。活動家の一人であるスヴェトラーナさんは毎週土曜日にモスクワ市の北端にあるミティノで袋を広げて立っている。袋ごとに、柔らかいプラスチック、硬いプラスチック、使い捨て食器、使い古しの歯ブラシ、CD、ガラス、ブリキ缶、テトラパックなどに分かれており、住民が家から持ってきたごみを分別して捨てるのを手助けしている。冬にはマイナス15度となる中、3時間立つのは楽ではないが、それでも続けている。

わざわざその時間に捨てに来る人がいるのを裏付けするように、ロシア人はごみ分別に積極的だ。政府に近い世論調査機関VCIOMによると、すでに分別している人は27%、分別したいと考えている人は47%に上り、反対派は11%と少ない。

リサイクル企業も一般ごみだけでは処理能力の半分にしかならないため、事業ごみを集めて埋め合わせているのが現実で、リサイクルごみが増えても対応可能だ。

プーチン大統領は分別するかどうかを自治体の判断に任せる方針だが、住民の意思にもかかわらずモスクワ市は現状維持を決めた。代わりに地方へ年間最大150万トンを「輸出」するというが、受け入れ候補地でも反対の声が上がり始めている。

ごみ分別収集を導入しない理由は、包装材ごみ増加を促している食品メーカーらのロビー活動にあると推測されている。焼却処理場の意義についても、排熱を利用して発電するといういうが、専門家は「現在でも電力が余っている」と首をかしげる。いずれにしても理屈ではなく利欲がからんでいるのは確かだろう。

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