セルビアの人材不足が深刻化している。医師、職人、看護師、溶接工、美容師、バス運転手など、あらゆる職種でドイツを中心とする西欧に移住する人が増えているためだ。セルビアを去る人は毎年5~7万人と推定されるが、季節労働者を含めるとこれを大幅に上回る。野党連合「セルビアのための連合」によると、過去6年の累計は60万人といい、人口700万人の同国にとっては大きな懸念材料だ。
結果として、セルビアでの暮らし向きが悪くなっている。首都ベオグラードでさえ、風呂場を直す職人が見つからない。医者も減っている。運転手不足で公共バスの運行本数が減り、乗客は以前より通勤に時間がかかるようになったとこぼす。
賃金面で考えると、技能があればドイツと比較してもあまり変わらない。ドイツの生活費のほうがセルビアより高いからだ。
それでも西欧を目指すのは「将来に希望が持てない」点にある。欧州連合(EU)の加盟は先の話で、国内経済は不振、ブチッチ政府はメディア統制や野党弾圧などで強権化が懸念される。「子どもの将来のために移住したい」という声が聞かれるのは無理もない。これに人材不足で生活の不便が増せば、「脱出」したい人が増えることはあっても減ることはないだろう。