首脳会議が対中戦略見直しを協議、公共調達市場で互恵関係構築へ

EUは22日の首脳会議で、対中戦略の見直しについて協議し、市場開放を求めて中国への圧力を強める方針を確認した。23日にはイタリアが主要7カ国(G7)で初めて中国の広域経済圏構想「一帯一路」に関する覚書を交わしたが、EUは結束して欧州への影響力を強める中国に対抗する。

EUはこれまで中国を「戦略的パートナー」と位置づけてきたが、中国企業による欧州企業の買収やインフラ投資が加速する一方、中国側の市場開放が遅れているとして不満を強めている。このため欧州委員会は今月12日、中国を「競争相手」と位置づける新戦略を打ち出し、対中戦略の見直しに向けた10項目の行動計画を発表した。首脳会議では欧州委の行動計画をたたき台に、対中関係の強化を掲げた2016年の「対中戦略に関するEU理事会決定」の見直しについて協議した。

新戦略の柱の1つは、公共調達市場における互恵関係の構築。域外企業によるEU域内の公共インフラ市場への参入は原則として自由化されているのに対し、欧州企業は中国市場への参入を阻まれている現状を踏まえ、対抗策を用意する。具体的には欧州企業の参入を制限している国の企業がEU加盟国が実施する公共調達の入札に参加する際に、差別的扱いを認めるという内容。特に中国通信機器大手の華為技術を念頭に、第5世代(5G)移動通信システムの整備で安全保障を確保するため、EUとして共通の対策を取るよう欧州委員会に具体策の検討を要請した。

首脳会議はこのほかインフラやハイテクなど、戦略的に重要な産業分野への投資に対する規制を強化することや、市場開放や不公平な貿易の是正などを中国側に求めていくことで一致。4月9日に予定されるEU・中国首脳会議の主要議題とする方針を確認した。

欧州委のユンケル委員長は会議後の記者会見で「中国はパートナーでもあるが、競合相手でもある」と強調。「公共調達や貿易関係で中国との間に互恵関係はなく、競争も公平ではない」と指摘した。また、フランスのマクロン大統領は「中国に対して甘い考えを抱く時代は終わった」と強調。イタリアによる一帯一路の覚書への署名に関しては「良い方法ではない。フランスは同調しない」と述べた。

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