CO2排出削減に向けた自動車業界の論争に幕

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)、BMW、ダイムラーの3社の社長と独自動車工業会(VDA)のベルンハルト・マッテス会長は20日、電話会談し、乗用車の二酸化炭素(CO2)排出削減強化に向けて欧州連合(EU)が打ち出した政策にVDAがどのように対応していくかで合意した。これによりVDAの同対応策をめぐる論争がひとまず収まった格好だ。

今回の論争はVWのヘルベルト・ディース社長が引き起こした。同社長は自ら作成したポジションペーターで、乗用車のCO2排出量を2030年までに21年の目標と比べて37.5%削減するというEUの新規制に対応するためには、自動車の公的助成策を大きく改める必要があると主張。ディーゼル車の燃料である軽油の税優遇策と、動力源として化石燃料を併用するプラグインハイブリッド(PHV)の補助金をともに廃止し、公的助成の対象を電気自動車(EV)に絞り込むことをVDAは要求していくべきだと訴えた。

VWは同社のディーゼル車排ガス不正問題が発覚した15年以降、EVへの経営資源配分を大幅に強化する方針に転換した。このため、公的支援をEVに絞り込むことはEUの新規制に対応するという大義名分だけでなく、VWの利益にも合致している。ディース社長は自らの提言が受け入れられなければ、VDAからの脱会も辞さない構えを示した。

だが、VDAには内燃エンジンやPHVを必要不可欠とするVW以外の自動車メーカーとサプライヤーも多数、加盟していることから、ディース社長の提言は大きな波紋を引き起こした。大型モデルを多く手がけるBMWとダイムラーにとってはディーゼル車とPHVは当面、欠かすことができない存在であり、BMWのハラルド・クリューガー社長は、特定の動力源に肩入れせずすべての動力源を平等に取り扱う「技術の寛容性の原則(Prinzip der Technologieoffenheit)」は必要不可欠だと反論した。

今回の電話会談はこれを受けて行われたもので、ディース社長とクリューガー社長、ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長はEVのほか、PHVも助成の対象にするというVDAの要求方針を堅持することで一致した。VDAは今回の合意を踏まえて作業部会を設置。国の助成策はどうあるべきかを具体化し、4月に開催予定のドイツ政府の「モビリティサミット」で提言する意向だ。

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