トルコで3月31日に実施された統一地方選挙は与党・公正発展党(AKP)が得票率44.3%で首位を守った。しかし、首都アンカラ、イズミルなど大都市の市長選で最大野党・共和人民党(CHP)に敗れるなど、後退ぶりが鮮明となっている。20%に上るインフレ率や失業率上昇など、経済政策に対する不満が反映された格好だ。最大都市イスタンブールでは暫定集計結果でCHP候補がAKP候補を2万4,000票の僅差でリードしているが、AKPが無効票に関して意義を申し立てたため、最終結果は今月10日前後に明らかになる見通しだ。
2日時点での結果によると、AKPが44.3%、同党と連立を組む極右・民族主義者行動党(MHP)は7.3%、CHPは30.1%(26.3%)、同党と提携する優良党(IYI)は7.5%、クルド系住民を主な支持基盤とする左派・国民民主主義党(HDP)は候補を擁立できない選挙区が多数に上ったこともあり4.2%にとどまった。AKPとMHPを合わせた得票率は51.6%と過半数を超えたものの、2014年の前回選挙時の60.6%から大きく減らした。投票率は85%だった。
今回の選挙結果にはトルコの国政を変える力はないが、昨年の大統領・議会選挙後の経済危機と、大統領の危機への対応を審判する機会としてとらえられてきた。AKPは依然として他党を大きく引き離す第一党だが、国民の不満には何らかの対応を迫られるだろう。
欧州評議会の派遣した選挙監視団は「選挙手続きには問題がない」としながらも、民主主義の基盤である思想・報道の自由が確保されていない点を批判している。トルコ情勢の専門家も「経済振興に向けて司法国家の存在は不可避」とし、エルドアン大統領がどの程度妥協できるかが注目される。
一方、AKPが地方選挙で守勢に立たされたことで、党内の反対派が離党し、新しい保守派政党を結成するとの観測も浮上している。反対派の主な政治家としてはダウトオール元首相、ギュル元大統領、ババチャン元経済相などの名前が挙がっている。