中央アジア各国の対外債務、欧米に代わり中国が存在感

アジア開発銀行(ADB)の最新の調査レポートによると、中央アジア諸国が今後も経済成長を維持していくには国内総生産(GDP)の6.8%に相当する投資を継続していくことが必要だ。しかしキルギスのように天然資源が乏しく外貨獲得の難しい国にとっては外国からの資金の借り入れは不可欠である。同諸国では近年、国際金融機関や欧米諸国に代わり借入先としての中国の存在感が増しているが、一部では一国への債務依存度を制限しようとする動きも出ている。

世界銀行によると、中央アジア諸国の対外債務の国民総所得(GNI)に対する比率は2017年時点で、最も高いカザフスタンが118%、次いでキルギスタンが111%に上る。これにタジキスタンが71%、ウズベキスタンが35%、トルクメニスタンが1.9%で続く。カザフスタンを除くと、天然資源の乏しいキルギスとタジキスタンの外国債務への依存度が高いことがわかる。

■元安を利用して資金調達~カザフスタン

カザフスタン国立銀行によると、2018年9月における同国の対外債務は1,615億ドルで、GDP比は94%だった。

現在カザフスタンは国境検問所の改修のため中国から20億元(2億6,300万ユーロ)を借り入れることを計画している。ウェブ紙『Kapital.kz』によると、これはカザフスタンとウズベキスタンの国境地帯、すなわちユーラシア経済連合(EEU)の域外国との国境沿いの検問所を改修するというもので、中国輸出入銀行がソフトローンを貸し付けることになっている。

カザフスタン外務省は、現在は元安傾向にあり、国家予算への負担はドル建て債務よりも明らかに小さいと説明している。ドル資金を年率3~4%で貸し付ける他の金融機関とは異なり、中国輸出入銀行は年率2%のソフトローンを元建てで返済期間20年という条件で貸し付けている。

■中国の対外債権が資源開発のてこに~タジキスタン

タジキスタンの対外債務は2019年1月時点で29億ドル、GDPの38.9%に相当する。中国輸出入銀行からの借入は13億ドルでそのうちの約40%を占める。今年同国で金鉱の開発を開始する中国の特変電工(TBEA)の例では、先に建設した火力発電所の建設費を同国が中国に返済するまでの期間、同社が鉱山の採掘を実施することができるとされており、中国が外国での資源開発のてことして対外債権を使う事例となっている。

タジキスタンの主な債権者は中国輸出入銀行以外には、世銀、ADB、イスラム開発銀行がある。同国はまた小規模の債務をアラブ系のサウジアラビア開発銀行、クウェート開発基金のほか、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資基金(EIF)と欧州の金融機関からも借り入れている。政府は外国から資金を調達し経済の重点分野に投入していく予定で、その額は今後3年間で7億8,000万ドルに上る。

同国はその他、GDPの40%に相当する額の送金を海外での出稼ぎ労働者から受けている。

■政府部門の負債が増加~ウズベキスタン

ウズベキスタンの2019年1月時点の対外債務はGDPの48%に相当する。債務は増加し18年には164億ドルに達した。現地紙によると政府部門の負債は増加しており、世銀やADBといった国際金融機関からの借入、自国通貨建て財務省証券の発行などで赤字を補っている。ウェブ紙『Spot.uz』によると、19年から21年にかけての国家債務の上限はGDP比40%に設定されている。政府の対外債務はGDPの27%が上限である。

ウズベキスタンの最大の貸し手は中国で21%を占める。次いで日本が16%、ドイツが4%、ADBが32%、世銀が16%となっている。

■対外債務の総額は約100億ドル~トルクメニスタン

トルクメニスタンの対外債務の総額は100億ドル前後である。同国政府が発表した昨年の成長率は天然ガスの輸出量の増加、輸入代替の進展、積極的な金融政策を背景に6.5%を達成した。しかしIMFによれば、世界でも屈指の天然ガス産出国である同国は、石油価格の低迷や外国経済の低迷など難しい対外環境への対応を迫られている。

同国は天然ガスの確認埋蔵量で世界4指に入るが、エネルギー輸出への過度の依存と経済多角化の失敗により現在苦境にある。基本的な食品が恒常的に不足しているため価格が上昇しているほか、税収を補うため政府はエネルギー料金の引き上げに着手している。同国ではガス、水道及び電力は無料だったが、昨年暮れにベルドイムハメドフ大統領はそうした補助金システムの廃止に乗り出している。

■債務の対GDP比56%~キルギス

キルギスの2018年10月末時点の国家債務は総額で44億ドルだった。これはGDP比56%に相当する。そのうち38億ドルが政府部門のものだった。ロシアは同年初頭に同国に対する債権のうち2億4,000万ドルを債権放棄している。

2019年の国家予算及び20年から21年にかけての予算見通しによると、同国は政府債務に283億ソム(3億5,820万ユーロ)を充てる予定である。これは国家予算のほぼ5分の1にあたる。債務の返済額は毎年増えており21年には365億ソムに達する見通しである。

こうした状況を受けキルギス政府と議員は債務のGDP比を70%に制限することを提案した。さらに国家安全保障の観点から、単一の借入先のシェアは国家債務全体の50%以下とするルールを導入することも予定されている。

同国ではシャドーエコノミーの半分が表に出てくればGDPは大幅に増加すると専門家は話す。(1KGS=1.59JPY)

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