カザフスタンで9日行われた大統領選挙は、暫定大統領を務めるトカエフ候補が71%を得票し、予想通り当選した。ナザルバエフ前大統領により後任に選ばれた同氏だが、選挙を通じて「国民に選ばれた大統領」として形式的に地位を正当化した格好だ。ただ、選挙に当たっては野党弾圧や不正投票などがみられ、「公正選挙」とは程遠い状況となった。
今回の選挙では7人が立候補したが、野党候補はジャーナリストのコサノフ氏のみだった。同氏は得票率16.2%で2位につけた。投票率は77.4%だった。
欧州安全保障協力機構(OSCE)の選挙監視団は今選挙について「民主主義手続きへの敬意が感じられない」と批判した。特に、首都ヌルスルタン(旧アスタナ)とアルマトイの抗議行動参加者の大量逮捕に強い懸念を示した。また、投票手続きが守られず、開票が正しく実施できた確証がないと指摘した。
ヌルスルタンとアルマトイでは9日、汚職・社会的不公平の是正を求めるデモが行われ、過去数年で最も多くの人が集まった。しかし、警察が通常よりも厳しく介入し、大量の逮捕者を出した。また、AFP通信やラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティー(RFE/RL)、ヘルシンキ委員会といった外国・国際機関の関係者が初めて拘束されるなど、政府の強硬姿勢が目立った。
カザフスタンを約30年間治めてきたナザルバエフ前大統領は3月に突然辞任を表明し、後任にトカエフ上院議長(当時)を指名した。「国民の父」として終身大統領の地位を確かにしていたナザルバエフ氏が突然辞任したことについて驚きが走ったが、識者の間では長女のダリガ・ナザルバエヴァ氏(トカエフ氏の後任として上院議長に就任)を後継ぎとするための布石ではないかと捉えられている。
大統領職こそ返上したものの、ナザルバエフ氏は共和国安全保障会議議長として軍・保安機関における最高決定権を握る。与党・ヌルオタン党首など他の要職にもとどまるため、今後も国政に対する強大な影響力を維持し続けることになる。