高給取りの被用者の給与引上げで最高裁判決

被用者のなかには労使協定で定める最高報酬を超える水準の給与を受け取る者がいる。いわば「高給取り」で、ドイツでは賃金協定外職員(Aussertariflicher

Angestellter、以下AT職員)と呼ばれる。このAT職員の給与を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月に判決(訴訟番号:5

AZR

354/18)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は銀行のAT職員が同行を相手取って起こしたもの。同職員は被告銀行の前身であるN銀行に1991年から勤務していた。

当初は銀行業界の賃金協定に定める給与を受け取っていたものの、昇給したことで、協定賃金の上限を超える高額給与のAT職員となった。

N銀はこれらAT職員に対し、協定賃金の上昇率に見合った給与の引き上げを行ってきた。また、N銀の経営陣は金融危機が発生した2009年、銀行業界の協定賃金引上げを同行でも2016年まで行うことを確約した。この確約はAT職員も対象としていた。

N銀は12年6月末付で分割され、原告は7月1日に新設された被告銀行で勤務することになった。

銀行業界では16年10月1日付で、協定賃金が1.5%引き上げられた。被告はこれを受けて、協定賃金の対象となる被用者の給与を1.5%引き上げたものの、AT職員については据え置いた。

原告はこれを不当として提訴。最終審のBAGは原告勝訴判決を下した。判決理由で裁判官は、雇用主が被用者に対し特定の便宜を繰り返した場合、被用者にはそうした便宜を今後も受けることができるとの正当な期待が発生し、そこから便宜の継続的な請求権が発生すると指摘した。継続的な便宜の請求権を発生させないためには、便宜を与える際にそれが一回限りのものであり、将来的に拘束されないことを被用者に分かりやすく明確に伝える必要があると補足説明した。

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