PSA―英子会社の工場閉鎖も―

仏自動車大手PSAグループ(リュエイ・マルメゾン)が英国の欧州連合(EU)離脱に伴い、英子会社ボクソールのエレスメア・ポート工場を閉鎖することを検討している。30日付の英『フィナンシャル・タイムズ』がタバレス最高経営責任者(CEO)の話として報じたもので、合意なき離脱でボクソールの収益が悪化した場合は同工場での生産を打ち切り、EU内の他の工場に移管する方針だ。

イングランド北西部チェシャー州にあるエレスメア・ポート工場では小型車「アストラ」を生産している。従業員は約1,000人。タバレスCEOは同紙に対して、「工場をエレスメア・ポートに置いておきたいが、状況が悪化して利益が出ないようになれば、会社を守らなければならない」として、閉鎖の可能性があることを明言。すでに生産移転先を特定していることを明らかにした。

PSAは2017年、は米ゼネラル・モーターズ(GM)の傘下にあったボクソールとオペルを買収。1999年から赤字が続いていた両社の経営をリストラなどによって再建し、18年には黒字化を果たした。

エレスメア・ポート工場は生産した車の80%を欧州各国に輸出し、部品の多くをEUから輸入している。このため、英ジョンソン新首相が10月末に合意なきEU離脱に踏み切れば、EUとの取引で関税が生じ、収益が大きく圧迫される。

タバレスCEOは「非常に簡単な話。つまり、関税がどうなるかが明確になる必要があるということだ」と述べ、合意なき離脱で関税が課されるようになれば同工場の閉鎖が避けられないとの考えを示した。今後数カ月以内に最終判断するとしている。

PSAは6月、アストラの新モデルをエレスメア・ポート工場と独リュッセルスハイム工場で生産する意向を表明したが、エレスメア・ポート工場での生産についてはEU離脱で悪影響を受けないことを条件としていた。タバレスCEOの発言は、新モデルにとどまらず、生産を全面的に打ち切ることを意味する。これが実現すれば、ボクソールの英での生産拠点は、商用車を製造するルートン工場だけとなる。

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