350億ユーロ相当の対米報復措置も、欧州車への追加関税めぐり欧州委が警告

欧州委員会のマルムストローム委員(通商担当)は7月23日、米国が輸入自動車に対する追加関税措置を発動した場合、欧州連合(EU)は対抗措置として総額350億ユーロ相当の米製品に報復関税を課すと警告した。欧州からの自動車輸出が米国にとって安全保障上の脅威になっているとのトランプ大統領の主張は「ばかげている」と一蹴。米側が追加関税を発動した場合に備え、報復関税の品目リストを作成したことを明らかにした。

マルムストローム氏は欧州議会の国際貿易委員会で、米国との貿易摩擦や対米貿易交渉について説明した。同氏は「EUはいかなる管理貿易や数量制限、自主的な輸出制限も受け入れない」と強調。「すでに350億ユーロ相当の報復リストを準備した。これを使わずに済むことを望んでいる」と述べた。

トランプ氏は昨年5月、安全保障を理由に関税の引き上げや輸入制限を発動する権限を大統領に付与する「通商拡大法232条」に基づき、自動車や自動車部品に25%の追加関税を課す方向で検討を開始した。しかし、EUや日本との関係悪化により国内産業に悪影響が及ぶとの懸念が広がる中、5月には関税発動についての判断を最大180日延期すると発表。米通商代表部(USTR)に対し、新たな期限となった11月半ばまでにEUや日本との交渉を進めるよう指示した。

一方、マルムストローム氏は米国との通商協議について、非関税障壁の撤廃に向けた基準認証など、いくつかの分野では進展がみられるものの、自動車を除く工業製品の関税撤廃に向けた交渉は進んでいないことを認めた。同氏は「交渉はまだスタートしていない。米国は農産品が対象から除外されている限り、協議を開始することはできないとの立場だが、EUにとっては譲れない一線だ」と強調。農業分野も含めた包括的な協議を求める米国との間で、依然として大きな隔たりがあると説明した。

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