EU司法裁判所の一般裁判所は24日、欧州委員会がオランダ政府に対して、米大手コーヒーチェーンのスターバックスに違法な公的補助を提供していたとして追徴課税するよう命じた問題で、欧州委の決定を無効とする判決を下した。ルクセンブルク政府が欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズに提供した同様の補助をめぐるケースでは、欧州委の決定を支持した。
欧州委は多国籍企業による課税逃れに対して国際的に批判が高まるなか、一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助ルールに違反している可能性があるとして、オランダとルクセンブルクのケースなどを対象に
2014年6月に本格調査を開始した。
スターバックスに関しては、オランダの製造子会社が2008年に税務当局と課税措置に関する取り決めを交わし、納税額を低く抑えていた疑いがあった。具体的には英国のグループ企業に焙煎技術に関する多額のライセンス料を支払うほか、スイスの系列会社から調達するコーヒー豆の仕入れ価格を相場の3倍近い水準に設定し、人為的に利益を低く抑えて不当に税負担を減らしていたとされる。
欧州委は15年に不当な税制上の優遇措置として、オランダ政府に最大3,000万ユーロを追徴課税するよう命じたが、政府とスターバックスは決定を不服として提訴していた。
下級審に当たる一般裁判所は、欧州委はスターバックスが不当に優遇されていたということを立証できていないとして、原告側に軍配を上げた。欧州委のベステアー委員(競争政策担当)は同日発表の声明で、「判決内容を精査して対応を決める」と述べ、上訴を示唆した。
一方、欧州委は15年、フィアットの金融子会社が12年にルクセンブルク当局と結んだ取り決めに基づき、資本金を実際より少なく見積もるなどして税負担を減らす優遇措置を受けていたとして、同じく最大3,000万ユーロの追徴課税を命じた。この案件については、一般裁判所は欧州委の決定に問題はなかったとして、訴えを退けた。