米自動車大手フォードはこのほど、ドイツのケルン・メルケニヒにある技術センターで開発したプロトタイプ「フォード・トランジット・スマート・エナジー・コンセプト」を使用して、車内照明の色を変えると乗員の体感温度に影響があるかを試験した。
このプロトタイプは10人乗りの電気駆動のミニバスで、2019年4月にアムステルダムで開いたフォードのイベント「ゴー・ファーザー(Go
Further)」で披露した。ミニバスのような車内空間の広いモデルでは、車内の暖房・冷房に必要なエネルギー消費量が多いため、航続距離が短くなる恐れがある。このため、今回実施した試験では、車内の照明を冷房中は青、暖房中は赤に変えると、乗員の無意識の体感温度に影響を与え、冷房・暖房の使用を抑えることができるかについて試験した。
具体的には、気候風洞実験室で、気温を冬季の摂氏0度と夏日の摂氏30度に設定し、乗員に体感温度の快適性(暑すぎる、寒すぎる)について評価してもらった。ドライバーは、各座席の温度をセンターコンソールのディスプレーで確認することができる。
この実験では、車内照明の色を変えた場合、空調のエネルギー消費が冷房で3.3%減少し、暖房では2.5%減少し、僅かではあるがエネルギー消費量の減少により、航続距離の最大化に寄与することが分かった。
なお、このプロトタイプには室内照明のほかにも、駆動装置の排熱を利用したヒートポンプなど、熱損失やエネルギー消費量を低減するためのさまざまな工夫が施されている。
フォードは年内に同プロトタイプの公道試験走行を実施する予定。