ルーマニアで24日行われた大統領選挙の決選投票は、現職のヨハニス候補が63.2%を得票し、社会民主党(PSD)のダンチラ候補(36.8%)を大きく引き離して当選を決めた。外国に住む有権者ではヨハニス候補が9割以上の支持を集めた。投票率は49.9%で、2014年の前回決選投票時の53.2%を下回った。国外居住者の投票者数はおよそ9万人に上り、過去最高を記録した。
ルーマニアの政治学者ブトォウナルトゥロンコタ氏はルーマニアの現状について、「同国社会の亀裂はこれまで以上に深く、他の意見を持つ人の話を聞く態度が失われている。ソーシャルメディア(SNS)では節度のない発言があふれ、虚偽のニュースも広まっている」と話す。そして、その理由の一つを、公共の場における「真の議論」がなされなかったことに見出している。
ヨハネス候補は、ダンチラ候補とテレビ討論会に出演することを拒否した。その代わりにヨハネス候補が「司会」的役割を担う催しが中継されたが、的を突く質問は出されなかった。これを踏まえて、ヨハニス大統領が今後、バセスク前大統領のように政治的影響力を強める可能性を懸念する声も上がっている。
PSDのダンチラ政権の退任を受けて成立した国民自由党(PNL)のオルバン少数政権は、安定的な政治運営に必要な議席を持たない。このため、来年秋の任期満了を待たず、議会の前倒し選挙が実施されるという見方が強くなっている。