長距離鉄道の付加価値税引き下げ、排出権は政府案を大きく上回る価格に

独16州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)は12月20日、長距離鉄道の付加価値税率を引き下げる法案を可決した。同法案は19日に連邦議会(下院)を通過しており、今年1月1日付で施行。ドイツ鉄道(DB)は長距離鉄道料金を同日から約10%引き下げた。

ドイツ政府は昨年秋、国内の二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに1990年比で最低55%削減するという政策目標の実現に向けて包括計画「温暖化防止プログラム2030」を閣議決定した。長距離鉄道運賃の付加価値税引き下げはその一環として打ち出した政策。鉄道運賃にはこれまで標準税率(現在19%)が適用されてきた。政府は自動車に比べて環境負荷が小さい電車の利用を促進するために、これを7%の軽減税率に変更する法案を作成した。

これに対し州政府は異議を唱えた。鉄道の付加価値税率が低下すると、その分だけ州の税収も減少するためだ。連邦参議院の承認を得られないと法案は成立しないことから、与党は両院協議会で州サイドに譲歩。21~24年の4年間、国が州に総額15億ユーロの相殺を行うことで合意が成立した。

政府は温暖化防止に向けて、ドイツ独自のCO2排出権取引制度を建造物と交通部門を対象に21年から導入する方針も打ち出した。これに対しても連邦参議院で強い勢力を持つ緑の党が、排出権価格が低くCO2削減効果が小さいと批判したことから、与党は同党と協議。排出権価格を政府案よりも大幅に引き上げることで合意した。

この結果、同価格は初年度の21年が1トン当たり10ユーロから25ユーロ、22年が20ユーロから30ユーロ、23年が25ユーロから35ユーロ、24年が30ユーロから45ユーロ、25年が35ユーロから55ユーロへと引き上げられる見通しだ。排出権価格がオークション方式で決定される26年以降についても、価格帯が政府案の「35~60ユーロ」から「55~65ユーロ」へと引き上げられることになった。政府は排出権価格に関する法案を今春に公開する予定だ。

同排出権制度の導入で得られる収入は◇再生可能エネルギー電力を促進するために消費者や企業が支払う助成分担金の引き下げ◇排出権の有償化に伴って増加する燃料費負担を軽減するために通勤費税税控除を引き上げる相殺策――に充てる。

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