複数拠点に関与する社員の採用、関連する全事業所委の同意は必要か

雇用主は新社員の採用前に、被用者の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)にその情報を文書で通知したうえで、同意を取り付けなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)99条1項に記されたルールである。このルールに絡む係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年10月の決定(訴訟番号:1

ABR

13/18)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判は貯蓄銀行向けITサービスを手がける企業のH拠点の事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同社はグループウエアの「エンド2エンドサービス」部署の責任者として2017年4月1日付でDを新規採用した。DはM拠点内にオフォスを構えていたものの、同拠点のほか、H拠点の一部社員にも業務上の権限を持っていた。

被告企業はDの採用に際して、M拠点の事業所委員会から同意を取り付けたものの、H拠点の事業所委にはDの採用に関する情報を提供せず、同意の取り付けも行わなかった。

H拠点の事業所委はこれを不当として提訴。一審と二審で敗訴したものの、最終審のBAGで逆転勝訴した。判決理由でBAGの裁判官は、Dが両拠点の従業員に対して権限を持つことを踏まえ、DはM拠点だけでなくH拠点の組織にも組み込まれていると指摘。被告はH拠点の事業所委からも同意を取り付ける義務があったとの判断を示した。

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