発電事業者に国が44億ユーロ、石炭発電廃止の補償で

ドイツ政府は16日、石炭発電事業者に総額43億5,000万ユーロを支給することで、同発電が盛んな国内4州の政府と合意した。石炭発電を2038年までに全廃する政策方針を受けてこれらの企業が被る損失を補償する狙い。独政府は今回の合意を受けて石炭発電廃止法案を今月中に閣議決定し、上半期中に議会で成立させる意向だ。

独政府は昨年、諮問委員会(石炭委員会)の答申を受けて、石炭発電を早ければ35年、遅くとも38年に全廃する方針を決定した。ドイツは再生可能エネルギーに軸足を置いたエネルギーミックスの実現を目指しており、原子力発電については22年末に廃止することがすでに決まっている。世界で初めて原子力と石炭発電をともに全廃する国となる。

石炭発電と、石炭の一種である褐炭の採掘を廃止すると、これらの事業を運営する企業は経済的な損失を受け、被用者にも大きなしわ寄せが出ることから、独政府は今回、国(連邦)が補償金を支払うことで合意した。43年まで支給する。

スヴェンヤ・シュルツェ環境相によると、今回の合意により旧式の発電所ブロック計8カ所は年内に操業停止となることが決定した。一方、完成間近のダッテルン第4石炭発電所については操業が開始されることになった。同発電所に対しては、温暖化防止が緊急の課題となっているなかで二酸化炭素(CO2)排出量が多い石炭を利用した発電所の新規操業を認めることは誤ったシグナルを送ることになるとの批判が環境保護団体などから出ているが、政府はエネルギー効率が高いダッテルン第4発電所を稼働させ、同効率の低い旧式石炭発電所を早期に廃止した方が良いと判断した。17年に42.6ギガワット(GW)に上った国内の石炭発電の規模を22年までに30GW、30年までに17GWへと低減させ、38年までに全廃することを計画している。

ドイツは不純物が多い低品位の石炭である褐炭の産出量が世界で最も多い。このため褐炭は最大の電源となっており、同国の発電に占める割合は19%(19年)に上る。

褐炭は独東部のザクセン、ザクセン・アンハルト、ブランデンブルクと、西部のノルトライン・ヴェストファーレンの計4州で採掘され、現地の発電所で利用されている。このため、石炭発電を廃止すると、発電・褐炭採掘を行う企業や就労者が直接的な影響を受け、地域経済・社会が大きな打撃を被る恐れがある。

独政府はその対策として、閉鎖対象となる発電所、炭鉱の運営事業者に補償金を支払うだけでなく、(1)炭鉱地域に国と州の官庁を移転するほか、研究機関を新設し5,000人の雇用を創出する(2)褐炭4州に総額400億ユーロを国が提供し、産業構造の転換などを支援する意向だ。

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