欧州連合(EU)は18日開いた財務相理事会で、日本との間で航空旅客の情報を共有するための協定の締結に向け、欧州委員会に交渉権限を付与することを決定した。「乗客予約記録(PNR)」をテロや国境を越えた重大犯罪の防止や捜査に役立てるため、個人情報保護と基本的人権を尊重しながら、日本・EU間でデータ共有を可能にする法的枠組みを構築する。
PNRは航空券の予約時などに収集される乗客の氏名、国籍、生年月日、連絡先、旅行日程、座席、荷物、支払い方法など、30項目を超える個人データ。EUはテロ対策の一環として、2012年に米国との間でPNRの提供に関する協定を結んだものの、加盟国間でデータを共有するシステムは整備されていなかったが、15年のパリ同時テロなどを受け、16年に各国当局がPNRを共有する制度を導入した。
EU議長国クロアチアのボジノビッチ副首相兼内務省は「日本はテロや重大犯罪との戦いにおいて緊密なパートナーだ。PNRデータを活用してセキュリティを強化すると同時に、市民の基本的な権利を強力に保護することで、EUと日本のパートナーシップをさらに発展させることができる」と強調した。
EUはこれまでに米国およびオーストラリアとPNRの共有に関する協定を結んでいる。カナダともPNR共有で合意していたが、EU司法裁判所が17年7月、機密性の高い個人データの取り扱いに関する条項がEU基本権憲章に抵触するとの見解を表明。欧州委はこれを受け、協定案を修正したうえで改めてカナダ側との交渉を進め、現在は最終的な法的手続きの段階にある。