新型コロナにどう対処すべきか?

新型コロナウイルスの感染がドイツでも急速に拡大し、市民だけでなく、企業も社員が感染した場合の対策や予防策の検討に追われている。しかし法律上はどのような措置が許されるのだろうか。また、どういった点に注意すべきなのだろうか。今回はこの問題について取り上げてみる。

■社員の感染が疑われる場合

ロベルト・コッホ研究所(RKI)は新型コロナの感染者数が多い危険地域を指定している(状況に応じて常時更新)。イタリアなどの危険地域からドイツに戻ってから14日以内に発熱や咳、息苦しさなどの症状が出た場合は感染が疑われる。そうした社員がいる職場では消毒など他の社員を感染から守るための措置を取る必要があり、そうした措置を雇用主が取らない場合、被用者は出勤を拒否できる。当然ながら感染者が出た職場でも感染予防措置を取らなければならない。

■社員の感染に伴う職場閉鎖と有給休暇

社内に感染者が出た場合、企業は職場を一時閉鎖し、消毒措置を取らなければならない。その際に、出勤できなくなった社員に有給休暇の消化を強制することはできない(消化要請は可能)。仕事をできないのは社員のせいではないためである。

■会社の敷地に入る人の体温測定

社内の感染を予防するために敷地内に入る人の体温を測定することは一定程度の予防効果がある。では、そうした措置を導入することは法的に可能なのだろうか。

社外の人に対しては雇用主の住居不可侵権(Hausrecht)を根拠に測定することができる。ただし、アジア系の人にだけを測定するなど差別的な措置は許されない。

社員については原則として測定が認められない。社員は会社で働くことを義務付けられており、敷地に入らないという選択肢を持たないためだ。そうした状況にある社員に体温測定を義務付けることは基本法(憲法)で保障された人格権の侵害に当たる。ただし、感染の疑いが持たれる社員がいる場合は、雇用主の指示権に基づいて体温測定を行うことができる。

■訪問者リスト

これも住居侵入拒否権を根拠に作成することができる。社内で感染者が出た場合、接触した人物を追跡できることから感染拡大防止の観点から好ましい。

■自宅勤務

従業員の代表である事業所委員会(Betriebsrat)がある職場では、同委の同意を得る必要がある。共同決定権(Mitbestimmungsrechte)の対象であるためである。

ただし、国外旅行から帰ってきた社員を自宅勤務扱いとすることについては事業所委の同意が不要(ルール化する場合は事業所委の同意が必要になる)

■操業短縮

需要の大幅な減少やサプライチェーンの寸断を受けて操短に踏み切る企業は今後、増える見通しだが、その場合も事業所委の同意が必要となる。労働時間は共同決定権の対象事項だからである。

■休校に伴う社員の休暇

ドイツの16州はすべて、学校・保育施設の閉鎖ないし休校を決めたことから、子供の世話をするために出勤できなくなった社員が多数、出ている。自宅勤務の可能性がない職場・職種では休暇を取らざるを得ない状況だ。そうしたケースでは雇用主に給与を支給する義務はない。公的健康保険はこれに該当する被用者に「子弟疾病手当(Kinderkrankgeld)」を年に最大10日、支給する。

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