米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングはこのほど、ハンガリーの格付け見通しを「強含み(ポジティブ)」から「安定的」に引き下げた。新形コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年と21年の経済成長見通しを見直したことや、政府の財政見通し、金融政策の変化を考慮した。格付けは「BBB」に据え置いた。
S&Pは新型コロナによる経済の後退により今後2年間の同国の信用リスクが大きくなったとの見方を示した。マクロ経済が悪化する可能性があるが、政府の強力な政策と2021年に予想される主要貿易相手国の景気の回復によって影響は緩和されるとし、見通しは安定的だとしている。
一方、経済の縮小により財政赤字の拡大が続き、政府債務が長期にわたって膨らみ、国際収支が悪化する場合には、格付けを引き下げる可能性があるとしている。成長率は2020年に4%縮小すると予想。21年については4.8%まで回復するとみている。
失業率は2019年が3.4%で、EUの中で最低水準だったが、今後は上昇して7%を超える可能性もあるとしている。景気の悪化に伴い、財政赤字は20年には対国内総生産(GDP)比で5%に上昇し、政府債務の対GDP比は年末には70%近くに達する恐れがある。
国内銀行については十分な自己資本を持ち収益もあげていることから流動性を確保できていると評価している。
オルバン政権の政策については、外国人投資家を狙い撃ちにする産業部門別の課税措置は競争環境を悪化させ、長期的な成長の妨げになりうるとの見方だ。もっともそれによって外国から自動車産業を含む製造業への投資意欲は減退しておらず、対内直接投資の減少にはつながっていない。
S&Pは2020年2月14日にハンガリーの格付け見通しを「ポジティブ」から「安定的」に引き上げていた。次回の改定は8月14日が予定されている。