ドイツの連邦憲法裁判所は5日、欧州中央銀行(ECB)が実施している量的金融緩和策の一部に問題があるとの判断を示した。ECBが3カ月以内に量的緩和の妥当性を立証できない場合は、独連邦銀行(中央銀行)による国債購入を停止させるとしている。
独憲法裁が問題視したのは、ECBが2015年から実施している量的金融緩和のうち、ユーロ圏の国債を各国の中央銀行を通じて買い取る措置。ECBが妥当性を証明できなければ、独連邦銀行による買い取りプログラム参加を停止させるほか、これまでに買い取った国債の売却も求める。
量的金融緩和をめぐっては、ドイツの学者らが重債務国の放漫財政を助長するもので、EU基本条約に定められたECBの権限を逸脱するなどとして反発し、独憲法裁に提訴。同裁判所は欧州司法裁判所に同案件を付託した。欧州司法裁は18年に合法とする判決を下したが、独憲法裁が再び判断することになっていた。
国債購入については、EU基本条約で禁止されている加盟国の財政の穴埋めに当たるとの見方があるが、この点では独憲法裁が違法ではないと認定した。しかし、ECBが同措置を決めた際のドイツ政府と連邦議会の対応に問題があり、ドイツの憲法に違反すると判断。欧州裁が合法判決を下した際に、量的緩和の妥当性を十分に精査しなかったとも指摘した。EU加盟国の裁判所が欧州司法裁の判決に反旗を翻すのは初めてだ。
今回の判決は、ECBが新型コロナウイルス対応として4月に決めた7,500億ユーロ規模の資産購入プログラムは対象外としている。ただ、ECBが対応を誤り、量的緩和の正当性を独憲法裁に認めさせることができなければ、量的緩和継続に二の足を踏む事態も予想される。
一方、欧州司法裁は8日、「EU機関がEU法に違反しているかどうかについて司法権を持つのは欧州司法裁判所だけだ」とする声明を発表。独憲法裁を名指しすることは避けながらも、この原則が守られなければ「EUの法秩序の統一性が危険にさらされる」として、独憲法裁の動きをけん制した。