欧州委員会は3日、リチウムやコバルトなど「重要な原材料」の安定供給を確保するための行動計画を発表した。デジタル化や環境政策を推進するうえで欠かせない原材料の調達にあたり、中国など域外への依存度を低減するため、域内の企業や公的機関が参加する「原材料連合(European Law Materials Alliance)」を立ち上げて欧州連合(EU)独自の供給網の構築を目指す。
原材料連合のモデルは、電気自動車(EV)用電池など戦略分野における域内産業の競争力強化を目的として、EUが2017年に立ち上げた「欧州バッテリー連合(EBA)」。間もなく結成から2年となる同連合には現在、EU域内に拠点を置く約400の企業や研究機関などが参加しており、欧州企業によるEV用電池の大規模生産に向けた準備が進められている。
欧州委が策定した重要な原材料のリストにはEV用バッテリーなどに使われるリチウムや、航空機やロケットの部品などに使われるチタンなどが加わり、対象は30品目となった。原材料連合では当面、リチウムやコバルトなどのレアメタルやレアアース(希土類)の安定供給に焦点を当て、域内の企業が探査・採掘から生産、リサイクルを行うEU独自のエコシステムを構築する。
欧州委によると、EUは域内で使用するレアアースの98%を中国からの輸入に依存しているほか、ホウ酸塩は98%をトルコ、リチウムとプラチナもそれぞれ70%以上をチリと南アフリカからの輸入に頼っている。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を受けた移動制限で供給網が寸断されたうえ、各国が輸出規制を導入し、戦略上重要な資源や製品を囲い込む動きが世界的に広がった。一方、リチウムはポルトガル、コバルトはポーランドなどで埋蔵が確認されており、域内で安定的に生産できれば供給国の圧力によって安定供給が脅かされる事態を回避できる。
欧州委はコロナ禍で重要な原材料の安定供給が脅かされた経験を踏まえ、域外への依存度を下げて供給ルートの多様化を急ぐ必要があると判断した。シェフチョビッチ副委員長は声明で「安全で持続可能な原材料の供給は回復力のある経済の前提条件だ。例えば欧州ではリチウムの需要がEV用バッテリーとエネルギー貯蔵だけで2030年までに最大18倍、50年までに最大60倍拡大すると試算されている。コロナ禍による混乱で原材料の供給断絶リスクが高まったことで、早急に域外への依存度を下げて多様化を進めるとともに、域内の企業や関連機関が結束して安定供給の道筋をつける必要がある」と述べた。