米政府が国際的な「デジタルサービス税」の導入をめぐる交渉の中断を表明したことについて、EUが反発している。欧州委員会のジェンティローニ委員(経済担当)は18日、遺憾の意を示した上で、米国との合意がなくてもEU共通のデジタル税導入に踏み切る用意があることを明らかにした。
ジェンティローニ委員はデジタル税導入に関する国際的な合意を望むとしながらも、米国の交渉離脱によって年内の合意が不可能となれば「EUレベルの新計画に乗り出す」とコメント。域内では現在、フランスなど一部の国が独自の課税に動いている段階にとどまっているが、共通の課税制度を導入することも辞さない構えを示した。
欧州では世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐため、デジタルサービス税を導入する動きが広がっており、これまでに主要国では英国、フランス、イタリアが導入を決めた。これに対して米政府は、グーグルなど「GAFA」と呼ばれる同国の巨大IT企業を狙い撃ちにした不当な課税として猛反発している。
同問題をめぐっては、経済協力開発機構(OECD)が国際的なデジタル課税制度を検討しており、米国もルール策定の交渉に参加。年内の合意を目指していた。
しかし、ムニューシン米財務長官は英国、フランス、イタリアとデジタル税導入を計画しているスペインを加えた欧州4カ国の財務相に先ごろ送付した書簡で、協議が「行き詰まっている」として、交渉の中断を通達。米財務省は17日、各国が新型コロナウイルス対応に集中する必要もあるとして、中断を決めたことを確認した。
EUではフランスがデジタル税の課税を国際的な合意があるまで見送ることを決めている。英国は法案が成立済みだが、実際の課税は始まっていない。米政府は各国が課税を撤回しなければ、報復関税を発動するとけん制している。
今回の米政府の動きには、欧州の各国も反発。フランスのルメール経済・財務相は18日、仏ラジオ局とのインタビューで「挑発だ」と批判。国際合意を優先する方針を転換し、年内に課税を開始する可能性があることを明らかにした。