オーストリアのITサービス大手S&Tは6月30日、スロベニアのIT企業イスクラテルの買収で合意したと発表した。取引額は3,750万ユーロ。金額は今後の業績に応じて上乗せされる可能性がある。取引は競争当局の承認を経て今秋にも完了する見通し。S&Tは今回の買収でスマート工場や高速鉄道向け無線機器事業を強化する。
S&Tのニーダーハウザー最高経営責任者(CEO)は、今後イスクラテルの営業利益(EBITDAベース)を10%以上増やせると述べた。イスクラテルは産業用IoT(モノのインターネット)ソフトウエアや第5世代(5G)通信のアプリケーションソフトに強みを持ち、買収によりS&Tは製品ポートフォリオを拡充していく。
両社はこれまでも高速鉄道向けの5G関連機器に関する共同事業を行ってきた。S&Tはソーシング、製造及び販売などの点で特にシナジー効果を期待するほか、イスクラテルの西欧市場への参入をサポートする意向だ。また、イスクラテルの低廉な人件費やアドリア海周辺諸国及び東欧で高い評価を得ている点を強みとして挙げた。
スロベニア北部のクラーニに拠点を置くイスクラテルは、通信、鉄道及びエネルギー分野のほか、オートメーション分野の企業にICT(情報通信技術)サービスを提供している。従業員数は900人。2019年の売上高は1億1,500万ユーロだった。