ポーランドで12日行われた大統領選挙の決選投票は、与党・法と正義(PiS)が推薦する現職のアンジェイ・ドゥダ候補(48)が中道右派の野党・市民連合(KO)のラファウ・チャスコフスキ候補(48)を僅差で破り、続投を決めた。これにより、PiSは2023年の議会選挙まで従来通りポーランドを統治する地盤を固めた。一方、5月の時点で圧勝が予想されていたドゥダ候補を、チャスコフスキ候補が短期間でここまで追い上げた事実は、PiS派と反PiS派が拮抗していることを示す。PiSが今後、反対勢力にどう対応していくかに関心が集まる。
中央選挙管理委員会が13日、開票率99.97%の時点で発表した得票率は、ドゥダ候補が51.2%、チャスコフスキ候補が48.8%だった。投票率は67.9%となり、第1回投票をも上回る高率を記録した。
選挙戦は有権者の心理に訴える形で戦われた。ドゥダ候補は「社会保障や治安」といった生活面での「安心」や、「家族、ポーランドという共同体、文化・伝統、歴史、英雄的行い、誇り」という保守的価値観を前面に押し出し、地方住民や50代以上の世代から支持を集めた。一方でチャスコフスキ候補は、PiSによるメディア支配や司法改革に反対し、権力のチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)を望む都市住民や30~40代の中堅世代から支持を集めた。
大統領選は当初、5月10日に予定されていた。当時はドゥダ候補の支持率が高く、第1回投票で過半数獲得が可能とみられていたが、コロナ危機でポーランド経済が体制転換後初めてマイナス成長に陥ったことで急速に人気が低下した。
ワルシャワ市長を務めるチャスコフスキ候補は選挙の延期決定後になって候補に指名された。短期の選挙戦にも関わらず、自らのカリスマ性を大いに発揮。ドゥダ候補に僅差で迫る健闘で、今後の野党勢力における地位を確かにしたと言える。