化学大手の独BASF(ルートヴィヒスハーフェン)は21日、廃タイヤを熱分解して油へとリサイクルする技術を持つ新興企業ピルム・イノバティオンスと協業すると発表した。製品製造に用いる原料の一部を熱分解油へと切り替える方針に基づく措置。石油化学事業の責任者は「BASFは樹脂産業の循環経済への移行を主導する考えだ。化学バリューチェーンの起点で化石原料をリサイクル原料に置き換えることは重要な梃子になる」と述べた。
ピルムは2007年の設立で、古タイヤから熱分解油を製造する施設を西南ドイツのディリンゲンに持つ。現在は年1万本の古タイヤを処理できる。同社は生産ラインを2本増設し、生産能力を引き上げる計画だ。
BASFはピルムに1,600万ユーロを投資し、増産体制の構築を支援。また、ピルムが製造する熱分解油の最大の顧客となり、自社の化学品生産に投入する。
BASFによると、熱分解油を原料とする化学製品は石油ベースの化学製品と同等の品質を持つうえ、二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない。自動車産業などで用いられるナイロン6(PA6)をピルムの廃タイヤベース熱分解油で生産した場合に排出されるCO2 の量は、石油ベースの製品に比べ1.3トン少ない(製品1トン当たり)。
ピルムは古タイヤから熱分解油を生産する施設をBASF以外の投資家とも共同建設することを目指している。その場合、生産される熱分解油をBASFは引き取る意向のため、投資家は熱分解油の販売先を確保できる見通しだ。