欧州委が新エネルギー政策発表、建物の省エネ化促進など

欧州委員会は14日、2050年までにEU域内で排出される温室効果ガスを実質ゼロにするカーボンニュートラル(気候中立)の実現を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、建物の省エネ化を推進するための政策案や、地球温暖化に大きな影響を及ぼすメタンの排出削減戦略を発表した。

欧州委は「リノベーション・ウェーブ戦略」と名付けた政策案の中で、公共施設やビルなど建物のエネルギー効率化を促すため、EU全体で30年までに3,500万棟を改装するとの目標を打ち出した。EUでは建物のエネルギー利用が域内におけるエネルギー消費の40%、温室効果ガス排出量の36%を占めることから、老朽化したビルなどの改築を促進し、断熱強化や冷暖房効率の向上、照明機器などの効率化を図る。

欧州委は30年までの改築目標を達成するには年間2,750億ユーロの追加投資が必要と試算。新型コロナウイルス感染拡大で深刻な打撃を受けたEU経済の復興に向けて創設する復興基金の中核を成す「復興・回復ファシリティ(RRF)」や、二酸化炭素(CO2)排出量取引制度における排出枠の売却益などを財源に充てるほか、国家補助規定を見直して加盟国が大規模な改築プロジェクトなどに公的資金を投入しやすくする方針を示している。欧州委は加盟国や業界団体などの意見も踏まえ、関連法の策定や資金および技術面での官民協力体制の構築などを進める。

一方、メタン排出削減戦略について、欧州委は気候中立や30年までの温室効果ガス削減目標を達成するうえで、CO2に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きい温室効果ガスであるメタンの削減が欠かせないと強調。現在は国や産業分野によってメタン排出量の算定方法にばらつきがある点を問題視し、EUとして国連環境計画が定める算定方法を採用するとともに、報告書の項目や形式を統一する計画を打ち出した。さらに欧州の全地球観測プログラム「コペルニクス」を活用し、エネルギー部門における大規模なメタン漏れなどの監視体制を強化する方針を示している。

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