マシンビジョンのスタートアップ企業である独ディーヴィオ(Deevio)は新型コロナ危機を事業拡大の追い風として利用する考えだ。グローバルに展開するサプライチェーンの脆弱性がコロナ禍で鮮明になったことを受けて、調達先をアジアや東欧からドイツに移す動きが強まると予想しているためで、共同創設者のダミアン・ハイメル氏は3年後に損益分岐点を超えるとの見方を示した。同社への取材をもとに『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が16日付で報じた。
ディーヴィオはベルリンに本社を置く2018年設立の企業。カメラ撮影の画像を人工知能(AI)で処理(マシンビジョン)して品質チェックを行うシステムを開発している。社名はAIの一種である「ディープラーニング(深層学習)」と「ヴィジョン」を組み合わせたものだ。
主に製薬と自動車業界に顧客を持つ。新型コロナ危機で需要は一時、落ち込んだものの、錠剤や液剤包装材の品質をチェックするシステムの販売が夏以降、回復している。今年は売上高が10万ユーロのケタ台の半ばに達する見通し。
新型コロナウイルスの感染が世界の工場である中国で流行したことを受けて、多くの企業は上半期、原料や部品を調達できないという問題に直面した。これを受けてサプライチェーンの多様化・短距離化を検討する機運が高まっている。人件費の安い国からドイツに生産移管するためには自動化を通したコスト圧縮が不可欠なことから、ディーヴィオはマシンビジョン品質検査の需要が増えるとみている。
現在は品質チェックをこれまで主に人の手で行ってきた中規模企業に照準を合わせて市場を開拓している。ハイメル氏は「わが社はカメラ装置を設置し、画像から良い部品と悪い部品の違いを学習するソフトウエアをカメラにインストールする」と述べた。同社は特に、製品表面に傷やくぼみがないかを調べる表面欠陥認識に分野に強みを持つ。鋳造と射出成型向け製品でノウハウを培った。
顧客は自動車など製造業が盛んなドイツ西南部に多いが、本社は今後も北東部のベルリンにとどめる。ベルリンにはIT分野の優れた人材が多いためだ。売上高を今後3年で、百万ユーロのケタ台の後半に引き上げる目標を掲げている。