ドイツとオーストラリアによる水素の共同プロジェクト。両国間の水素サプライチェーン構築について実現可能性を調査する。両国政府は9月に当該プロジェクトについて趣意書を締結しており、12月1日にプロジェクトがスタートした。
ドイツ側は、ドイツ工学アカデミー(acatech)とドイツ産業連盟(BDI)が調整役を務める。オーストラリア側はシドニーのニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)がコンソーシアムを主導する。
また、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)は当該プロジェクトに170万ユーロ超を投資する。オーストラリア側は、外務貿易省と産業・科学・エネルギー資源省がプロジェクトを支援している。
当該プロジェクトは、オーストラリアで生成した再生可能エネルギー由来のグリーン水素をドイツが輸入することを視野に入れた取り組み。
オーストラリアは、太陽光発電による大規模な発電量を確保できる潜在性を持つほか、資源輸出のインフラ構築に関するノウハウを持つ。これに対し、ドイツは水から水素と酸素を分解するエレクトロライザー(水電解装置)の製造を得意とし、水素関連技術の輸出による産業発展を目指している。
今回のプロジェクトでは、水素の生成から輸送、変換、利用までの一連の価値連鎖(バリューチェーン)を対象に、競争力の高い価格で水素の輸入が可能かどうかなども含め、両国間の水素サプライチェーンの構築について実現可能性を調査する。
独経済紙『ハンデルスブラット』によると、ドイツからは鉄鋼系複合企業ティッセンクルップ、エネルギー設備大手のシーメンス・エナジー、化学大手のBASFなどが参加している。
同紙によると、専門家は、ドイツ国内におけるグリーン水素の生成では、国内需要の最大30%までしか対応できず、残りは輸入に頼る必要があると予想している。このため、ドイツ政府は6月に発表した水素戦略の中で、水素の輸入に向けた国際的な協力関係を構築していく方針を示している。具体的には、オーストラリアのほか、モロッコ、サウジアラビア、チリなどに注目しているとされる。