「ブルー水素での製鉄は技術的に可能」、規制枠組みの明確化をティッセンなどが 要求

鉄鋼大手の独ティッセンクルップ・スチール・ヨーロッパとノルウェーのエネルギー大手エクイノール、独ガスパイプライン運営会社オープン・グリッド・ヨーロッパ(OGE)の3社は12日、「ブルー水素」を用いて銑鉄を製造するプロジェクトの実現可能性調査結果を発表し、技術的に実現可能だとの結論を明らかにした。そのうえで、最終的な投資決定は政策・規制上の枠組みが明確化しないと下せないと指摘。ドイツ政府や欧州連合(EU)に速やかな対応を促した。順調に行けばプロジェクトは2027年にも実現できるとしている。

水素は製法に応じて2種類に分類される。1つは再生可能エネルギーを用いて水を電気分解して製造するもので「グリーン水素」と呼ばれる。

もう1つは化石燃料から水素を取り出すもので、水素生産に際して二酸化炭素(CO2)が排出される。この製法で作られた水素のうち、CO2を大気中に放出するものを「グレー水素」、CO2を有効利用ないし貯留するものを「ブルー水素」と呼ぶ。

環境に最も優しいのはグリーン水素だが、現時点ではコストが高く商業化のメドが立っていない。このため、3社は天然ガスを原料にブルー水素を製造。製造した水素を独西部のデュースブルクにあるティッセンの高炉まで運んで製鉄に使用する。水素製造に際して発生するCO2は海底の地層に貯留する計画だ。

水素の製造地については北海に面する蘭エームスハーヴェンと、ドイツの北海沿岸地域2カ所を候補に絞り込んだ。生産能力は1.4ギガワット(GW)ないし2.7GWを検討している。

製造したブルー水素の輸送についてはパイプラインの利用が必要不可欠だとの結論に至った。他の輸送方法では採算が合わないとしている。

水素製造で発生したCO2の貯留場所についてはノルウェーの大陸棚と、蘭ロッテルダム港が候補に挙がっている。これら2カ所ではCO2貯留の実現に向けたプロジェクトがそれぞれ「ノーザン・ライツ」「ポートス」という名で進められており、実現可能性調査ではノーザン・ライツの方が進展した段階にあると結論付けている。

CO2を貯留場に輸送する手段としては船舶とパイプラインの両方が可能との結論に至った。

今回の調査ではグリーン水素の価格を1メガワット時(MWh)当たり58ユーロとする外部調査に基づいて行った。水素製造に用いる天然ガスについては将来の長期的な平均価格を1MWh当たり23ユーロと想定している。

ドイツ政府やEUに対しては、天然ガスパイプラインの水素輸送への転用は可能かを明確化することや、CO2の船舶輸送を可能にするEU法の改正などを求めている。

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