米通商代表部(USTR)は7日、フランスの「デジタルサービス税」に対抗するための報復関税の発動を見送ると発表した。当初は6日に発動する予定だった。米IT(情報技術)大手などを標的としたデジタル税を導入する動きが広がる中、USTRはフランス以外の国・地域の課税制度についても調査を進めており、「各国への対応を揃える」ため発動を延期する。バイデン次期政権の発足を目前に控え、懸念された貿易摩擦の激化はひとまず回避された格好だ。
フランスのデジタルサービス税は、売上高が全世界で7億5,000万ユーロ以上、仏国内で2,500万ユーロ以上のIT企業を対象に、国内での売上高に3%を課税するという内容。米政府は通商法301条に基づく調査の結果、フランスの税制は「GAFA」と呼ばれる米国の巨大IT企業を狙い撃ちにした不当な課税と認定し、2020年7月に化粧品やハンドバッグなど13億ドル(約1,400億円)相当のフランス製品に25%の関税を上乗せする方針を発表していた。
デジタル税は世界的に活動する大手IT企業の課税逃れを防ぐためのもので、経済協力開発機構(OECD)を中心に課税ルールに関する協議が進められている。米仏は20年初め、国際的な合意が形成されるまでフランスが課税を見送る代わりに、米国も制裁を発動しないことで合意したが、OECDは10月、目標としていた20年中の合意を断念すると表明。これを受けてフランスは12月からデジタル税の徴収を再開していた。
USTRはデジタル税を導入または検討しているEUや英国、ブラジルなど10カ国・地域についても通商法301条に基づく調査を行っており、6日にはこのうちインド、イタリア、トルコの調査結果を発表した。3カ国のデジタル税は米企業を差別的に扱っており不当と認定したが、「現時点では行動に移さず、あらゆる選択肢を検討する」として報復関税の発動を見送っている。